はじめに:実験の終わりと、”リアルな現在地”

プレシーズンが、終わった。クリッパーズ戦の敗戦という結果に、もはや何の意味もない。全ての「実験」が終わった今、我々の心の中に残っているのは、「期待」と、「不安」と、そして、どうしようもなく「嬉しい」という、三つの入り混じった感情だ。この記事では、この三つの感情を一つ一つ丁寧に解きほぐしながら、ウォリアーズの”リアルな現在地”は一体どこにあるのか、その答えを導き出す。

Ⅰ. 前回の「見るべき3つのポイント」答え合わせ

まず、前回のブレイザーズ戦の動画で提示した「見るべき3つのポイント」の答え合わせから始めよう。これは、チームの進化の軌跡を追う上で、極めて重要な指標となる。

① ウィル・リチャードのローテーション定着 → 答え:YES

最高の答えが出た。クリッパーズ戦でも2試合連続でスターターに抜擢され、13得点、4リバウンド、そして特筆すべき3スティールを記録。攻守に渡って、プレシーズンという枠を超えた信頼を完全に勝ち取った。これは、今季最大の「収穫」と言っていい。

② クミンガのプレーメイク再現性 → 答え:保留

残念ながら、彼は右足首の捻挫でこの試合を欠場した。しかし、その怪我の原因が、前の試合で彼が激情を見せた、あのプレーだったというのが、あまりに皮肉だ。彼の成長と、彼の魂の熱さ。この二つと、チームがどう向き合っていくのか。その答えは、開幕までお預けとなった。

③ ホーフォードと周りとの連携 → 答え:YES

これも、満点の回答だ。彼のスタッツは決して派手ではない。しかし、彼の持つ「バスケットボールIQ」が、どれだけこのチームのオフェンスを円滑にするか、我々はもう知っている。一つ一つのスクリーン、一つ一つのパスに無駄がない。彼がいることで、クインテン・ポストとの経験値の差が歴然としてしまったのは事実だが、ホーフォードという最高のお手本がチームにいることの価値は、計り知れない。

Ⅱ. クリッパーズ戦で、本当に見えたもの

太陽は、完璧に輝いている。しかし…

まず、ステフィン・カリー。彼は、一人だけ、もうレギュラーシーズンを戦っていた。最終的なスタッツは、20得点、5アシスト、プラスマイナスはチームトップの+7。しかし、彼の本当の凄さはそこではない。前半、彼は無理に点を取りに行かず、パスを散らして周りを活かそうと、必死に「システム」を機能させようとしていた。

だが、機能しなかった。なぜなら、カリー以外の誰も、点が取れなかったからだ。

そして、第4クォーター。11点差をつけられた絶望的な状況から、カリーがギアを上げた。10-0のランを一人で牽引し、一気に5点差まで詰め寄った。そして、彼はベンチに下がった。「あとは頼んだぞ」と。しかし、そこからがこのチームの現実だった。結局、逆転はできなかった。カリーがどれだけお膳立てしても、カリーがいなければ、このチームは勝ちきれない。その、残酷なまでの現実を、我々は見せつけられた。

太陽だけでは、夜は越えられない

では、なぜ、カリー以外の選手は点を取れなかったのか。

もちろん、ブランディン・ポジェムスキーの怪我は、あまりに痛かった。試合開始わずか2分半での、あのアクシデント。彼はコートに戻ってきたが、明らかに本調子ではなかった。ターンオーバーも6つ。チームから、計算できるプレーメーカーが一人、消えてしまったのだ。

そして、この試合で何が一番浮き彫りになったか。それは、ジョナサン・クミンガが、このチームにとっていかに重要か、ということだ。システムが機能しない、誰も点が取れない、そんな膠着した状況で、理屈も戦術も関係なく、たった一人で無理やりこじ開けられる選手。それが、クミンガなのだ。彼の、あの身体能力と爆発力は、こういう苦しい試合でこそ、必要だった。彼の不在が、この敗戦で、痛いほど身に沁みた。

Ⅲ. 開幕へ。最後の本音

さて、プレシーズンが終わり、いよいよ開幕だ。最後に、本音を話そう。

ターンオーバーが23個?正直、どうでもいい。こんな、昨日今日組んだような、実験的なラインナップで、ターンオーバーが増えるのなんて、当たり前だ。そんなことより、カリーが万全で、ホーフォードがフィットして、リチャードという宝物まで見つかった。そっちの方が、よっぽど重要じゃないか。

このプレシーズン最終戦が我々に教えてくれたのは、すごくシンプルだ。

太陽は、完璧に輝いている。しかし、太陽だけでは、夜は越えられない。
そして、クミンガという”ジョーカー”の価値は、我々の想像以上に大きい。

この、痛いほどの現実と、確かな収穫を胸に、我々は開幕を待つ。それこそが、ファンである我々の、最高の「期待」ではないだろうか。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。